ヘンプの産地
日本では、古くから麻といえば 大麻を指すことが多く、国語辞典の麻の項には、葉はモミジに似て 切れが深い等 大麻についての説明がされています。
大麻の原産地は、ヒマラヤ山谷とみられ、その後 欧州、中国等へ伝えられ、欧州では 18世紀まで 亜麻に次いで重要な繊維資源とされ、また中国でも当初黄河流域で栽培され、後に各地で栽培されるようになり、ラミー(苧麻)に次いで広く利用されてきました。
我が国では、縄文前期に属する 貝塚から発見され、中国から渡来した最も古い帰化植物といわれ、16世紀の綿の普及をみるまで 苧麻に次ぐ重要織物原料とされていました。
今日では、ジュート、マニラ麻等の出現に伴い 世界的に生産は少なく、ジュートの代替品として、中央アジア、カスピ海周辺が主要産地となってます。
我が国では、終戦後、GHQの大麻栽培禁止令、昭和23年の大麻取締法の施行等の影響もあって減少し、今日では、栃木県等で僅かな生産がみられる状況にあります。
特性と用途
ヘンプは、桑科に属す一年草本で、学名をカンナビス-サチブァ(Cannabis sativa, L.)といい、その茎は方形をしています。
葉は拳状で、葉縁は鋸歯状です。 雌雄異株になり、雌麻は「めぎ」又は「みあさ」と称し、俗に「あさのみ」と称する種子を生じます。
茎の靭皮繊維は、帯黄白色を最優としますが、多くは緑色か銀鼠色です。 繊維は1~2m位の長さで、単繊維の長さは5~53mm、太さ10~50ミクロンほどになります。
強力は、綿に優り、伸度は劣ります。しかし、吸湿性と耐水性に優れ、腐敗しにくく、晒す(さらす)ことも容易で、自然の光沢等もあって美しく染め上げることができます。
繊維採取の方法は、茎幹を水に浸し、発酵(浸漬)の後、剥取(手紡ぎ)、破茎、打綿、切断、櫛梳、紡績(機械紡績)にて糸にします。
しかし、繊維は細く、短く、しかも表面が平滑で撚りをかけづらいことから亜麻、苧麻に比べ紡績性に劣ります。
ケナフ等、ジュートの代替繊維としては数種あります。大麻もその一つでかつては手紡ぎによって、苧麻とともに衣料用として広く使われましたが、今日では資材向けに転じ、生産が僅少で高価なため、高級下駄緒の芯縄、神事慶事用及び凧揚げ用の特殊糸等として使用されています。