麻の基本知識

ラミー(苧麻 )について

ラミーの産地と栽培

ラミーは、熱帯、亜熱帯地方で成育します。中国(湖南省、湖北省、江西省、四川省、浙江省他)、ブラジル、フィリピン、インドネシア等で栽培されていますが、量的には中国が格段に多いようです。

ラミーは多年生の植物で、繁殖法は品種改良や特殊な場合を除いては、実生法(種蒔)は行わず、主として株分け法、吸枝法、挿木或いは取木法等を用います。

これらは2~3年後にはじめて実用的な繊維が採取出来る状態になります。

良質な繊維を得るためには、古くは一度出た新芽に火をつけて焼くことや、刈り揃えることで、次に出て来る芽を育てた栽培もされていました。
成育期間は、地方ごとに異なりますが、中国では年間3~4回の収穫、フィリピンでは5~6回の収穫が出来ます。
特に成育期間中の雨量の状態は収穫量、品質に多大な影響を及ぼします。
農家は茎を刈り取りし、農場近くで剥皮機(Decoticator)に掛けます。

収穫出来る剥皮された原料(原草)の収量は生茎重量の3~5%です。
この靱皮部は天日乾燥をした後に、等級分けをして出荷されます。

ラミーの特徴

ラミー(Boehmeria tenacissima Gaud. Boehmeria nivea Gaud.)は、イラクサ科に属する多年生の草本類で、 地下に根株を形成し、これから多数の発芽をします。

草丈は、通常1.5~2.0mに伸長し、基部が太く先端に向かって漸次細く、中央部で直径1cm内外となります。
茎の色は、始めは緑色ですが、成熟するにつれ基部から次第に褐変し、
発芽後50~60日で、下部3分の1が褐変して収穫適期となります。

この時期を過ぎると、例え茎を刈り取らなくても、次の根株が発生して生長を始めます。

この様に発芽が繰り返されるので、気候が順調であると、年に3~4回の収穫が可能となります。

次に根株からは、地中に向かって多数の栄養根が発生し、植付初年目で30~60cm、年を経て1m以上に伸長する極めて深根性の工芸作物です(3m以上に伸びた記録もある。)。
また栄養根とは別に、地表に平行に伸長する多数の地下茎(吸枝と呼称して増殖用に使用される。)を発生し、新芽は根株及びこの吸枝の先端から萌芽します。

葉は、葉柄が長く周辺は鋸歯状の心臓形で、表面は緑色です。裏面に白色の細毛を密生しているものを「白葉系」と称し、「うらじろ」の語源となっています。

葉の大きさは長径15cm、短径12cm程度ですが、品種によってかなりの差が認められます。

なお、ラミーの増殖は通常吸枝、時に挿木によりますが、近時組織培養によるクローン苗も開発されました。

繊維細胞は、長さ20~200mmと不揃いですが、平均約60mm前後で、植物繊維中最も長く、断面の長径50ミクロン、短径35ミクロン程度と最も太いことを特徴とします。
また単繊維は、中央部が太く、両端に向かって、緩やかに細まる紡錘形で、先端は、やや丸みを帯びています。
繊維の表面は平滑ですが、縦走する条線と関節状の筋が観察され、横断面は扁円形で大きな中空孔(ルーメン部)をもち、成熟するにつれて細胞壁が肥大して中空孔が、狭められます。

ラミーの機能性

吸湿・発散性に優れています

ラミーは、天然繊維の中でも吸湿(汗)・速乾性に優れています。
汗ばんでも肌に密着せず、そのさわやかな清涼感が大きな特長です。
この性能を活かして、衣料用途に加え、インナーウェアや寝具にも使われます。

清涼感に優れています

涼しい衣料とは、”ひんやり”とする触感と併せて通気性と発散性に優れていると云うことです。
なお、このひんやり感は熱伝導率が大きいことにもよります。
この性能から、ラミーはわが国の高温多湿の夏には欠かせない衣料素材です。
特に超細番手ラミー糸を使った織物、編地は高級衣料素材として広く使用されています。

光沢があります

光沢のある繊維とは、重合度・結晶化度・配列度が高いものといわれています。
セルロース繊維、高分子物質における、重合度とはブドウ糖(単量体)の個数で表され、高分子物質には結晶部分(分子鎖が規則正しく配列している部分)と非結晶部分(分子鎖が不規則に存在する部分)が存在し、結晶化度は結晶部分の割合を示しています。
配合度とは、繊維内の分子が繊維鎖方向に配列している度合いをいいます。
ラミーの美しい光沢は、他の繊維(コットン、レーヨン等)に比べ、これらの割合が高いために生み出されているのです。
自然の上品な光沢をお楽しみいただけます。

ラミーは丈夫です

ラミーは、天然植物繊維の中で最高の強度、ヤング率をもち、水に濡れるとさらに強さが増大します。
高温高圧の洗濯にも耐えるため、業務用ユニフォームやホテルグッズ、JR新幹線座席カバーにも使われています。

ラミーの歴史

ラミーは歴史的には古くから使われています。福井県の遺跡からは縄文初期のものも発見されており、特に弥生時代には現在でも再現が難しい高度な織物が作られていたことが、遺跡の出土品からも知られています。

万葉集や日本書紀にも多くの歌や記証があり、正倉院に収蔵されている当時の衣料品をみても、皇族から庶民に至るまで広い階層に使用されていたことがわかります。最近では衣料品に加え、ファッション素材・インテリア等生活に深く浸透し、広範囲に利用されています。

また、現在、伝統的工芸品に指定されている小千谷縮(おぢやちぢみ)、近江上布、宮古上布、八重山上布などは上布(じょうふ)と呼ばれ、各県、各地で「村おこし」「町おこし」の主役となっているものがありますが、これらは苧麻の織物です。

ラミーの語源

日本で、苧麻(ラミー)は、古くから「からむし」または「まお」等と呼ばれていました。

大正時代に入って中国から多量の苧麻が輸入され、また改良種が栽培されるようになってからは、苧麻と呼ばれるようになりました。

なお、ラミーという名は、マレー半島で生産された苧麻をマレー語でRamiと呼び、その後麻を賞用するフランスを経て「Ramie」として各国に波及し、現在では世界の通用語となっています。

 

もっとラミーについてお知りになりたい方はこちらへ。

トスコ株式会社
www.tosco-net.co.jp/

投稿日:2019.12.14 更新日:

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